DEFINE
(1)ロマン
本音では、0から100までこれ!ロマンです。サイトのタイトルにもしちゃいました。正確に言うなら「ロマン主義」であり、英語で言えば「Romanticism」。概念構成としては他の要素を全て内包するかもしれず、言い方が難しいのですが、あえてロマン単体でひとつの理由としてみました。では、そのロマンを構成する要素を考えてみましょう。
- 複雑さ、ギミック感
- 製作者・メーカーの信念や思い入れ
- 一生ものたりうる(永続性)
- 最新の科学技術に逆らうロックなあり方
- 手間と愛着
電池を使わず、外側の何物にも頼らず、何百という金属の塊・歯車が噛み合い、正確な1秒を紡ぎ出すというそのこと自体、夢に溢れていると思いませんか!!ホイヘンス博士の生み出したヒゲゼンマイによる調速の仕組みが現代まで用いられ続けているなんて! クオーツも、少し角度は違いますがロマンに満ちています。それまでの当たり前だった機械式を超える精度を得るために血の滲むような研究開発の結果、全く新しく水晶振動体が利用され、さらに当初は巨大だった機構を腕時計のサイズにまで小型化・省電力化したこの技術者魂。日本の誇るSEIKO(セイコーエプソン)がその技術を世界の発展のために独占しなかった点も天晴です。
時計が好きという時には、その時計を作るメーカーの存在を抜きには語れません。俗に言う高級時計メーカーは、必ずそれぞれのメッセージを持っています。何十年もの年月その軸をぶらさず、より良いものづくりを重ねていることそのものにロマンを感じるじゃありませんか。
機械式時計は、金属の集まりです。そのため、中身のネジや歯車が故障した時には、いざとなれば金属からそのパーツを削り出してあてがってあげれば、その時計はまた同じように動き出すのです。インスタントな使い捨て製品の溢れたこの世界において、大切に使い修理を重ねればいつまででも使えるなんて、とても素敵なことだと思いませんか?しかも、素晴らしい機械は人間の寿命すら超えます。死んだらどうでもいいという声も聞こえそうですが、自分の亡き後も世界の時を刻み続ける、残された自分の大切な人とともにあり続ける、そんな永遠性・永続性をロマンと呼ばずして何と呼びましょう。
これは主に機械式時計に言えることです。科学の発展したこの現代において、より正確な時間を測ることや知ることのための手段は、機械式時計の他にもいくらでもあります。科学技術が実限したクォーツを初めとする時計は、機械式時計の何倍もずっと精度が良く、価格も安いものが沢山あります。それでも、それだからこそ、そんな機械式の役だたなさに反骨心を感じざるを得ないのが時計愛好家だと思います。私達の心を豊かにするものは、私達の血を沸き立たせるものは、えてしてそうした『役に立たない』何かではありませんか。
機械式時計には、手間がかかります。時計と永く付き合おうと思ったら、使用時の注意事項も沢山ありますし、日々のケアに加え、定期的なオーバーホール(分解清掃)が必要です。もちろん高級クォーツでも似たことが言えますが、愛を持って接するとそれが何年後になって返ってくるなんて、愛着が沸くというものです。ペットしかり、料理しかり、生活に豊かさを与えるものは、どこかに手間がかかるものなのかもしれません。
(2)伝統性
高級時計、特に機械式時計やそのメーカーと切っても切り離せないのは、その機構や会社の持つ歴史と伝統です。新しいことに価値が見出され続けるこの世の中で、高級時計業界は珍しくその伝統に重きが置かれ、古さを尊重することのできる素晴らしい世界なのです。
- ストーリー
- 骨董的価値
ストーリーと一口に言っても様々でしょうが、ここで言いたいことは、技術革新の歩みであり、時計業界・企業の闘いの歴史です。時計業界各社には、必ず各社の語るべきストーリーがあります。特に古くから続くメーカーは特に、伝説とも言うべきそれを持っています。例えば、伝説の時計師がルーツにあったり、月面着陸に使われたり、世界初の腕時計メーカーだったり…。あるメーカーの時計をつけるということは、そのストーリーを身に纏うということなのです。
単純に伝統というのはそのルーツの古さと言い換えることもできます。なぜ古いということが価値になるのか。それは私が思うに、淘汰を経た洗練を意味するからではないでしょうか。腕時計は、その歴史の証の凝縮と言うことができます。歴史を重んじる時計業界において、その価値の源泉には「時を超越する普遍性」があるのです。
(3)ブランド性
高級時計というモノになくてはならない要素のひとつでしょう。ブランドの価値が何によって宿るのか、また各社・各グループのラグジュアリー戦略のありよう等については、様々な本で語られていますが、ここではそれを簡単に、私の言葉で書きたいと思います。
- 希少価値
- 風格・品格
誰もがどこでも簡単に手に入れられるわけではないということが、その価値を高めていると言えます。一般的に高級時計はその販路がある程度限定されているため、例えばコンビニやスーパーで見かけることはないでしょう。新品を買える場所は、ブティック(直営店)、百貨店、正規代理店店等に限られ、それがまたプレミア感を生んでいると思えます。最近ではあえてネット通販を取り入れる会社もありますが…。
ブランドモノが好きな人に対して、その理由を見栄がはれるとか威張れるとか表現することがあると思います。どこかに他意のある表現ではありますが、もちろんその理由も間違いではないでしょう。その人がそう思うならそうなのです。但し、それをもう少しポジティブに言い換えるとこの要素になると考えました。ブランドを身につけることは、イコールその品格を身に纏うこと。そうすることで、背筋が伸びるということかもしれませんし、そのブランドに見合う人間を目指そうと思えるということかもしれません。ブランドにはそんな力があると思うのです。
(4)機能性・外見
最後にはなりましたが、お店でパッと見て一番すぐよく分かるのはこの要素でしょう。これも大切。これが大切。
- 単純な格好良さ、味わい深さ
- 男性にとってほぼ唯一身に付けられる装飾品・工芸品
- デザインの多様性・洗練
- 道具的価値
- アフターサービスの信頼性
こんな魅力の定義をしておきながら、元も子もないことを言うようですが、時計ってただただめっちゃカッコよくないですか!?オーラありませんか!?もしかしたら、この他の要素は、このカッコよさに惹かれる自分を正当化するための言い訳でしかないのかもしれません。 なお、ここでも主張しておきますが、パッと見で格好良い!欲しい!と熱望できるかどうかを大切にしてほしいと願っています。
特に男性ビジネスマンについての記述となりますが、一般的にはあまり多くのアクセサリーは身につけられません。せいぜい結婚指輪くらいでしょうか。私服ではバングルや指輪、ピアスやネックレスもあるかもしれませんが…。そんな男性にとって、時計は大切な個性を主張する貴重な場でしょう。その余白を楽しむ心の余裕を持ちたいものです。
特にクォーツとの比較となりますが、機械式時計はその機構によりクォーツより太く長く重たい針を動かす力があります。これにより、クォーツでは難しいデザインを実現することができるのです。
機械式時計は骨董品のような言い方をしてきましたが、今でも機械式であることに道具としての機能面における優位性もあります。それは、上述の動力の強さもありますし、一般的なクォーツがステップ運針(1秒1秒針が動き止まる)なのに対しスイープ運針(針が滑らかに動く)による視認性や、電池切れがないのでいざという時に頼りになる等でしょう。
安価な時計に比した高級時計としての魅力になりますが、購入後も末永くお付き合いすることを前提とするため、アフターサービスの存在は欠かせません。メーカーによって保証の体制は様々ですが、中には「永久保証」を地でいくところもあります。まさに機械式時計たる価値を体現していますよね。震えます。
まとめ
安い時計は、いくらでもあります。 安い時計だからと言って、機能が必ずしも劣るわけではありません。 時を知るための機能であれば、時計である必要すらありません。 それでも、そんな現代の当たり前を乗り越えて、手にしたいと思えるのが機械式・高級時計だと言えるでしょう。 『実用性』と『芸術性』を兼ねた他に例のないモノづくり、それが時計だと思います。そして同時に、『実用』を極めた結果として『芸術』に昇華しているから、そこにロマンが溢れています。 文化の中に生きる私達人間は、効率・機能性・必要性・経済性だけでは捨象できない価値を見出し感じることができるのです。