ABOUT

ここまで学んできたあなたは思ったはずです。「腕時計ってめっちゃいろいろあるやん!」と。
万人にとっての『最高の腕時計』がないのであれば、僕達は僕達に最高にぴったりくる腕時計を選びましょう。
大切にすべき視点、比較できない何か、時計業界におけるものさしを手に入れましょう。

(1)比較できることとできないこと (2)どんなタイプの時計か見定めよう (3)コンサルテーションシート活用 (4)選ぶ必要のある時とない時の分類 (5)最後に覚えておいてほしいこと 「今持っている腕時計との組み合わせ?」

後悔しない選び方とは?

(1)比較できることとできないこと

”アンティーク時計のうち、カラフルなものや変形のもの”

 「選ぶ」ということは、つまり、選ばないものを決める、何かを切り捨てるということで、大変な苦痛を伴う行為となってきます。これまで目にしてきたあらゆる腕時計の中から、どれかを今の自分にとってベストだと言い切るためには、「比べられることと比べられないこと」にわけて考える必要があると思います。
 まず、比較できることは、俗にいう『スペック』として主に定量的に把握できる情報です。例えば、防水性能が100mだとかケースサイズが38mmだとか。この中にも、数値に優劣のあるものと一概にそうとも言えないものがあります。例で出した防水性能は、(他の条件が同じなら)基本的には高い方が安心で望ましいですよね。でも、ケースサイズは38mmくらいの手首細めの僕なんかでもできるサイズがいいか、44mmとかもっと男らしいものを好む方もいるはずです。(どっちのサイズも持っていますが。)次に、比較できないことは、主に定性的な情報と言えます。例えば、文字盤の色が白か黒かとか、時計メーカーの理念や歴史などです。これらは当然、全て優劣・甲乙はつけられないでしょう。こう見てみると、どの腕時計を買うか迷うというのは当然です。なぜなら、同じものさしで測る(比較する)ことのできる情報は、定量的かつ優劣が明確な部分に過ぎず、その他の要素は全てその腕時計やメーカー固有の客観的になんて定義し難いふわふわした側面でしかないからです。
 さて、それらを書いた上で、最後に言っておきますが、いや、こんなことを言うんならまじでここまでの話は何なんだよ!時間返せよ!腕時計くれよ!とかなるかもしれませんが、仕方ないんだもん。それでも戸惑い憤るあなたの手首を握ってこう言わなければなりません。腕時計を買おうと決意する理由は、一番根っこにあるべきその動機は、定数的なデータでも定性的な性質への一義的な好みだけでもなく、「惚れ込み」です。いや、そうであってほしい。つまり、ロジックや客観視なんて全部超えたところにある純粋なパッションです。もちろんその情熱が「とりあえずごちゃごちゃした情報やウンチクはどうでもいいから欲しい!!パッと見でもう最高!ここまでこんなサイト見て損した!」という場合もあれば、「調べる途中で知ったこのメーカー、このモデルの誕生秘話に感動した。それを知った上で腕時計を手にしたら、何だかその歴史が、努力の日々と時計師の想いが、腕を通じて僕の心に流れてきたのです。」ということもあるでしょう。それは個々人の性格的なものであり、あるいは同時に時計メーカーやモデルの持つ神秘性であるわけです。こんな結論になったからと言って、ここまで読んでくださった方の数分が無駄になったわけではありません。ここで分かってほしいのは、高機能、高性能がイコール「最高の腕時計」なわけではないし、最後の決め手になるかまたは買いたい気持ちの軸に常にいるのは、理屈を超えた感情であることが多いし、それでいいのだということです。あなたの『欲しい』を、正当化してあげましょう。


[関連コラム]

【時計✕好み:僕の嗜好?志向?至高!Season1】
(2019年1月7日コラム)
View this post on Instagram

みちる../『腕時計ロマンチシズム概論』さん(@watch_romanticist)がシェアした投稿 -

(2)どんなタイプの時計か見定めよう

”タグホイヤー(TAGHEUER)のカレラ1187。クロノグラフ。黒文字盤。スイスメイドの腕時計。ワインディングマシンに入れた状態”

 時計を選ぶ時に一番大切なポイントは前項ですでにご紹介しました。ここでは、『時計のタイプ』について考えてみてほしいと思います。例えるなら、要人の警護のためにと思ってファンキーな軽自動車を買ったら実際にはもっと適してる黒塗りの車があった…とか、登山のために靴を買ったはずがピンヒールではダメと言われて絶望した…とかそういう『タイプ』です。ここで注意しておきたいのは、本当の本当に考えたら、自分が良ければいいんですよ。自分が満足するために腕時計を買うんだから、他の人や空気にとやかく言われる筋合いは本来ないんです。でも、そうなった時に後悔したくないという人には事前に読んでもらうと有益かなと思います。さて、腕時計のタイプ・カテゴリーを以下に列挙し性質を説明してみます。雑誌等で見かけるかなぁというものを挙げていますが、あくまで私見です。空想した可能性すらありますごめんなさい。自分が欲しい腕時計がどんなタイプなのか、実はどんなタイプが欲しいと思っていたのか、ぜひ考えてみてください。

■ダイバーズウォッチ
 名前の通り、ダイバーがするために作られた腕時計。特徴は、残り潜水時間を計測できる回転ベゼルや高い防水性能等。ロレックスとブランパンが両社「ウチが最初や」と主張しています。
■マリンウォッチ
 ダイバーズも含むけれど、ダイビングに限らず海をモチーフにした時計。ヨットや船窓、錨のモチーフ等さまざま。コルム、ウブロ、ユリスナルダン等が浮かびます。
■パイロットウォッチ
 よく考えたら全部名前の通りなので「名前の通り」って言うの辞めますが、飛行機のパイロットが着用することに特化した腕時計。飛行機の位置や速度を割り出せるベゼルがつきます。ブライトリングやIWCなんかが有名。
■ミリタリーウォッチ
 戦時下の過酷な状況でも高精度を保ち、また視認性の良さが保障された軍用腕時計です。パネライやブレゲなど。
■ツールウォッチ
 ここにある様々なタイプを内包する概念でもありますが、険しい状況で目的を達成する機能を備えたプロユースな時計。登山用等が好例でしょうか。
■ドレスウォッチ
 ドレッシーな、つまり華やかさと繊細さを纏った腕時計を指します。一般的には二針か三針プラス革ベルトで、腕時計の厚みが抑えられて男性ならワイシャツの中に収まるようなものです。究極はパテック・フィリップのカラトラバです。
■スポーツウォッチ
 激しい動きや汗等のスポーツに耐えうる腕時計です。今はラグジュアリースポーツ全盛の時代で、代表的なメーカーを挙げるのも難しいですが、オーデマピゲのロイヤルオークやロレックスのデイトナなどでしょうか。
■レーシングウォッチ
 F-1等の自動車レースで使用されてきた腕時計です。速度をはかるクロノグラフがついています。有名なのは、タグホイヤーのカレラやオメガのスピードマスター等。但し例えばデイトナもスポーツウォッチと近いです。
■ワールドウォッチ
 世界を股にかけるために必要な機能を搭載した腕時計です。具体的には、GMT機能(別の国の時間帯を同時に表示できる)やワールドタイム機能(世界24ヶ国の時刻を同時に全て表示できる)等が挙げられます。出張・旅行や海外の友人との交流にもいいわぁ。
■ビザールウォッチ
 ここに手を出すまでには長い道のりだから知るのはまだ先でいいけど、現代アートに通じるような奇妙な・風変わりな時計の意。レッセンス、RJ、HYTなどを知れば納得できるはず。
■天文時計
 天文学的な情報を表示できる腕時計です。シンプルなものではムーンフェイズ(月の満ち欠け)から、惑星の動きの再現、星座を表現するものまでさまざま。宇宙とか星とか、ただでさえロマンが満ち溢れてるというのに、腕時計に込められるなんて、もう怖い。
■宝飾時計
 このくくりが一番曖昧ですが、何となくそう呼んでます。特に女性モノ等で、宝石自体がメインの腕時計がそれです。インデックスやベゼルへのセッティングが一般的ですが、中にはショパールのハッピーダイヤモンドのように文字盤の中に揺れ動くものもあります。
■コンプリケーションウォッチ
 複雑機構をもつ腕時計です。ミニッツリピーター(音が鳴る)、パーペチュアルカレンダー(永久カレンダー)、トゥールビヨン(重力の影響を無効化)などがあり、際限なく複雑に、そして高価になっていきます。


[関連コラム]

【時計✕好み:僕の嗜好?志向?至高!Season2】
(2019年1月8日コラム)
View this post on Instagram

みちる../『腕時計ロマンチシズム概論』さん(@watch_romanticist)がシェアした投稿 -

(3)コンサルテーションシートを活用しよう

”時計入れ・ウォッチボックス。腕時計が入っているのが見える”

 こちらの『コンサルテーションシート』をご覧ください。
 皆さんの終わりなき欲望と期待に応えて、腕時計ロマンチシズム概論オリジナルのシートを作成しました。時計を構成する要素、選択肢を幅広く記述したつもりです。使い方としては以下のような形を想定しています。
(A)気になっている、比較したい腕時計がある
 ぜひそれぞれの腕時計の条件を書き出してみてください。それぞれの輪郭がぼんやりと見えてきて比較の助けになるかもしれません。
(B)まだ気になる腕時計が見つかっていない/もっと自分に相応しい腕時計があるんじゃないかと思える(自分が求める条件が分かる場合)
 まず、自分の求める完全な条件を書き出しましょう。それを持って時計屋か時計好きな知人を訪ねましょう。すると、自分が大切にしたいことを忘れずに、効率よく条件に合う時計を見て回ることができるはずです。この場合、初めに書いた「条件」はあくまで「初めての指標」程度だと柔軟に考えておくとよいでしょう。店員さんからのアドバイスを待つべきです。
(C)上記同様(自分が求める条件が分からない場合)
 Bの逆になります。お店に行ったり腕時計の画像を見たりして、とにかく「気になる腕時計」を見つけ、その時計の持つスペック・条件を書き出しましょう。そのシートは、あなたの腕時計へのニーズを可視化したものになります。もしかしたら、その中にあなたの譲れないものが見えてきたり、逆に無用なこだわりに気づいたりするかもしれません。
(D)『腕時計ロマンチシズム概論』コンサルティング・カウンセリングを受けたい
 なんと現在無料で購入コンサルティングをおこなう計画があります。メールベースか、スカイプ等を利用するか、はたまた銀座等の店舗をご案内するような形か。ご希望の方がいらっしゃったら、下記の連絡先よりご連絡ください。
 連絡先:info@watch-romance.com

 最後に、すべての場合で知っておいていただきたいのは、「希望の条件は変わりうる」ということです。大切だと思っていたことがどうでも良くなったり、白が好きだったのが黒が好きになったり、そんな変化はあり得ることです。時計選びの軸は絶対的なものじゃない。いつ変わったっていいじゃない。そんなしなやかな気持ちで時計と向き合いましょう。


(4)腕時計が欲しい?「腕時計を選ぶ必要のある時とない時」の分類とエトセトラ

”アンティークの機械式腕時計のムーブメントを使ったカフスリンクス”

 そもそもですよ?まずそもそも、Step3で「腕時計を選ぶ方法」なんてものを書く必要があったのかという問題があります。このサイトでご紹介する5つのステップでは、まず前提に「腕時計が欲しい」という想いがあり、それを実現するためにロジカルに行動を進めていく形をとっています。しかし、現実の世界ではその通りなことの方が少ないかもしれません。そこで、考えられるパターンとその時に気をつけたいことを考えてみます。
(1)「腕時計が欲しい」という想いがどこからか芽生え、その願いを合理的に達成し効用を最大化しようとするタイプ。(便宜的に『模範囚』と呼びます。)
(2)人からのプレゼントに代表されるように、ひょんなことから腕時計を手に入れることが確定して、若干ビビったりそれなら折角なら良い時計を選びたいなと思ったりするタイプ。(『恵まれた受益者』と呼びます。)
(3)旅行中等に急に素敵な腕時計に出逢ってしまって、今ここで買わないともうおそらく出逢えないし買えないし買わないよなぁというタイプ(『メタルスライム』と呼びます。)
(4)雑誌やお店や他人の手首から、「あの腕時計、素敵だな」と思い始め、今では購入を視野に入れているタイプ。(『サイレントマジョリティ』と呼びます。)
(5)なんかよく分からないけどもう腕時計最高というタイプ。複数本欲しくなってくる時計ファンを含む。(『サイコパス』と呼びます。)
 さて、(1)模範囚はピュアな意味ではほとんどこの世に存在しないと言ってもいいでしょう。ただ、(4)サイレントマジョリティーから派生して、最初の腕時計に興味は失せても時計自体への興味が増していく可能性はあります。(1)模範囚はぜひとも本サイトの敷いたレールの通りに一通りお考えいただき、そこからぜひ自分の世界を構築してください。(4)サイレントマジョリティーは、基本的には最初に感じた直感を信じ、外堀を埋める意味でサイトの情報を活用いただければと思います。その途中でちょっとでも違和感が出てきたら、「じゃあ本当に自分に合った腕時計って何だ?」を考えればいいわけです。そうでなければぜひ一直線にどうぞ。(2)恵まれた受益者は、自分が選べる場合とそうでない場合がありますが、選べる場合には(1)模範囚と同じノリでロジカルシンキングを進め、自分にぴったりくる一本を導き出して授与者にご依頼ください。選べない、すでにもらってしまった場合には、もちろん原則としては授与者のお気持ちを推察しその時計を愛していただきたいですが、それが難しい場合には本サイトの知識を活用して「うんこみたいな腕時計だと思ったけど良くみたら光沢感は良い」とか長所探しをしてほしいですし、それをバネに次の時計欲へつなげてください。(3)メタルスライムは、遭遇中にこのサイトを見るわけではなく、すでに逃して(あるいは購入して)から見るか、このサイトの信者がいつかどこかで自分がそうなるかでしょう。そんな時に一つだけ覚えておいてほしいこと。それは…次項をご参照ください。(5)サイコパスはもうどうしようもありませんので、流れに身を任せて時計ライフを楽しんでください。こんな風に「腕時計を欲しい・選ぶ」状況を分類してみるとまた新しい景色が見えてくるかもしれません。(かなり頭がおかしいと言わざるを得ませんね!)


(5)最後に覚えておいてほしいひとつのこと

”ブルガリ(BVLGARI)の腕時計。カーボン製の機械式時計。文字盤がブルー”

 さて、最後に真面目なメッセージをひとつ。腕時計に限らずモノを買うというシチュエーションでよく見聞きするのは、「迷ったら買え!」とか「迷うくらいなら買うな!」とかいった言説です。そのどちらも正であり誤であると思います。腕時計において何か言うとすれば、それはこうなります。
「買いたい理由が値段なら買うな!買わない理由が値段なら買え!」
 つまり、「まだ確信は得ていないけど、高価だし、絶対いいもんだし、買った方がいいっしょ!」はNGということ。その逆に「欲しいけど値段が高くて買えない」のも時計においては考えたくない。さらに「あの腕時計は買えないけど、よく似たこちらの腕時計なら買えるから買っちゃえ!」というのはできることなら避けていただきたいです。もしかしたら皆さんの中にはそれで満足できる人もいるのかもしれませんが、十中八九、後で自分の腕時計を愛せなくなると言われています。これがさらに進むと、模造品やスーパーコピー等になります。これはもうできるならとかでもなく、犯罪ですし全く心が満たされないと思いますので辞めましょう。ロマンが、腕時計をする意味が、なくなります。腕時計を買うなら、ぜひ本当にその時計のよいところを愛して買ってあげてください。


[関連コラム]

【僕がタグホイヤー『モナコ』を選ぶときに考えたこと】
(2018年10月26日コラム)
View this post on Instagram

みちる../『腕時計ロマンチシズム概論』さん(@watch_romanticist)がシェアした投稿 -

coffee break!「すでに持っている腕時計との相性や組み合わせで考えようとしているあなたへ」

”2個の腕時計を並べた。文字盤の色は黒とシルバー。どちらもクロノグラフ。タグホイヤーとゼニスの機械式時計”

 蛇足ですが、こんなケースがありました。
「社会人になって良い腕時計が欲しくなった。今している腕時計も高価ではないが気に入っている。新しく買う時計は今の腕時計との組み合わせで考えたい。」
 前提として、全く綺麗事ではなく、腕時計は値段ではありません。思い入れのある腕時計は、いつまでも大切にしてほしいです。値段が決して高くなくてもファッションやシチュエーション、気分に合わせて使用したい腕時計が僕にもいくつかあります。その一方で、高腕腕時計は高級腕時計なりのクオリティがあることは間違いありません。もしかすると、その日に使用するか否かを同じ土台で判断することは難しくなるかもしれません。その可能性は十分にあります。ゆえに、「すでに持っている腕時計との相性や組み合わせで考える」ことは、ある程度以上の思い入れがない限りあまりおすすめできません。例えば、元から四角い時計が好きで安価でも持っていて、本当は四角いものがいいんだけどもう持ってるから丸いものにしよう…という判断をすると後悔する可能性が高そうな気がしませんか?一概に値段の違う腕時計は比較・比肩できないというわけでは全くありませんが、その発想をする時にはどうかご注意くたさい。